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禅芸物語1-悟道大丈夫

更新日:4月6日




 5月4日から5日にかけて、西光禅寺において非常に特別なイベントが開催されます、その名は「国際禅芸文化交流会」です。このユニークなイベントはどのようにして始まったのでしょうか? そのきっかけは、台湾の芸術家である陳国寧女史と、西光禅寺の住職である檀上宗謙和尚との素敵なエピソードでした。


 2023年9月末、名古屋で開催された第五回観音文化国際シンポジウムに、主催者の台湾霊鷲山全球百八観音文化總會の会長である陳女史及び講師である檀上和尚はその場にいました。シンポジウムの最後に、檀上和尚はギターを弾きながら、参加者と一緒に自作曲「大丈夫」を熱唱しました。

 翌朝の朝食会場で、陳女史はたまたま和尚の隣の席におられ、和尚に声をかけました。

「昨日、我を忘れ、夢中に歌っているお姿は、まさに禅そのものであり、和尚は悟られたお方ですね」

 和尚は一瞬驚いた顔をした後、何かを考え込むよう様子でした。突然、机の上のナプキンを取って何かを書き始めました。書き終わると陳女史に手渡し、それに四句の漢詩が書かれていました。

  靈樹山降雨   秋月照心象  

  和顏同一緣   悟道大丈夫

 今度は陳女史が驚いた顔をして、ナプキンに書かれた詩を読んた後、真剣な表情で言いました。

「ありがとうございます。台湾に帰ったら、この詩を清書させて頂きます」

 わずか3分間のやりとり、そして、会話と言えるような会話をしていないにもかかわらず、なぜかお二方は古くから知り合った親友のように笑顔を浮かべながら、合掌してお別れを告げました。


  朝食会場から出て、私は和尚に質問しました。

 「さきほどの謎のようなやりとりはどういう意味ですか?」

和尚はニッコリして答えました。

 「人は、自分が体験したことだからこそ言えるもので、陳先生は禅の真髄を悟った体験を自らしたから、私にそのようなお言葉をかけて下さったのでしょう」

 「なるほど、ということは、陳先生も悟られたお方ですね?」

 「分かりません。せめて神仏とつながっている方だと思いました。ところで、『大丈夫』の意味は分かりますか?」

 「はい、勿論です。英語で言うと、No Problemですね」

 「それだけではありません。『大丈夫』は仏教用語であり、神や仏とつながっている状態は『大丈』と言い、お寺ではみんなが集まる広い本堂のようなところを『大丈の間』といって、本来は神仏とつながる間という意味です。そして、『夫』というのは人のことです。仏教の世界では、『大丈夫』は神仏とつながっている人のことですよ。私と陳先生は言葉が通じなくても、神仏と通じているような気がしますから、その詩を書いて差し上げました


 後になって分かりましたが、陳國寧女史は宗教家ではなく、台湾の故宮博物院の顧問を務めるなど「台湾の博物館の母」と呼ばれるお方であり、台湾文化部より「文化協会勲章」を受章された芸術家なんです!!。


本文にある絵は、お二方が出会った一か月後に、陳先生の台湾のご自宅にて和尚と陳先生が共同で創作した作品です。和尚は山と河の絵を描き、陳先生は和尚の詩を自ら清書したうえで、『観自在』の印鑑を押しました。

≪続く≫





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